恢徳堂のヨーシャさんのブログ

おのれを棄てろ…、大義の為のいしずえとなれ……。

December 10, 2021

おのれを棄てろ…、大義の為のいしずえとなれ……。

はじめに

この記事は「ゲームとことば Advent Calendar 2021」の12月11日分の記事です。
前日の記事はI.Hさんの記事「Grandmaがババアになるまでの話」でした。

さて、私が選んだことばは「タクティクスオウガ」の「おのれを棄てろ…、大義の為のいしずえとなれ……」ということばです。
タクティクスオウガが発売されたのは26年前の1995年になるわけですが、1995年というと日本中を揺るがした様々な出来事1が起きた年でもあります。
このタクティクスオウガは親戚から借りてきてドはまりしたのですが、とりわけ珠玉のことばがちりばめられている重いゲームでした。

ゲームのあらすじ

このゲームは民族紛争まっ最中のヴァレリア島が舞台のゲームです。

主人公のデニム君

主人公のデニム・パウエル君16歳2は港町ゴリアテというところに父親のプランシー神父と姉のカチュアといっしょに住んでいたのですが、ある日港町ゴリアテを敵国の同盟国の精鋭部隊である暗黒騎士団が襲います。その際に、デニムは父親を暗黒騎士団に連れ去られてしまいます。
その暗黒騎士団のリーダーは暗黒騎士ランスロットというのですが、ある日ランスロットが港町ゴリアテに来るという話を聞いたところからゲームは始まります。
その後、いろいろあってデニムは父親と再開するのですが、既に父親は虫の息でした。その父親が語ったことばがこれです。

おのれを棄てろ…、大義の為のいしずえとなれ……。
現実をきちんと見すえて、よりよい選択肢をえらぶのだ…。
おまえは……次の世代のために道をつくるだけでよい………それを…忘れるな……。

なお、このストーリーはいろいろはしょっています。実際にプレイして、このストーリーの重さを味わってください。

このことばの与えた影響

当時、このことばに出会ったショックは本当に大きいものでした。
私は高校生だったのですが、いつも生徒会の役員選挙に立候補しては落ちるという状態でした。

その頃から政治というものを考えていたのですが、まさかその選挙を応援する立場になるとは思っていませんでした。
それが、東京都青少年健全育成条例の改定問題3だったのです。
反対してくれそうな候補の応援に入って、公職選挙法の範囲内でいろいろ応援していましたが、
その甲斐もあって、知事提案の条例でありながら東京都青少年健全育成条例改定案は一度廃案になりました。
そのとき、私は無職でしたが、己を捨てて大義のための礎になろうとしていたんだと思います。

それから10年の時が流れ、オタク界隈はいろいろ炎上するようになりました。
そのとき仲間だった人たちの中には議員になった人もいます。
その一方、仲間から飛んでくるひどいことばのせいでもう政治問題には関わりたくないという人もいます。
なんだかんだでいろいろあって、もう私は動けないな、と思ったこともありました。

今の私は、それこそバルマムッサの収容所で逆らわないで過ごすウォルスタ人の囚人なのだと思います。
バルマムッサの囚人は、決起させようとやってきたデニムたちに対し、以下のようなことばを投げかけます。

戦って何になるというんじゃ。
争いは憎しみしか生み出さん…。

まさに、炎上に次ぐ炎上に心を折られてしまった私には響くことばでした。
そんな彼らは、主人公が救い出したウォルスタ人の活動家、ロンウェー公爵の率いるウォルスタ解放軍に虐殺されてしまいます。

しかし、僧侶オリビアが父親を失った後のデニムに語りかけたこのことばも忘れることができません。

さあ、立って!デニム!
貴方が目指している世界は、民族や家柄なんかで差別されるような世界じゃないはずよ!
貴方がバクラム人であったとしても築こうとしている世界は貴方の理想と同じはずよ!
それとも、ブランタのようにバクラム人だけが安住できる国を作るつもりなの?
…お父上の言葉を思い出して!

憎しみの渦巻く世界に生きている私ですが、誰もが幸せになれる世界を夢見て、未来のためによりよい選択をしていきたいと思います。

結びに

さて、「ゲームとことば Advent Calendar 2021」の明日の担当は柳田真坂樹さんです。
『火吹山の魔法使い』とのことですが、まったく知らない作品なのでどのような書かれ方をするか楽しみです。

  1. 阪神大震災とか地下鉄サリン事件とかいろいろありましたが、自分のサークル「恢徳堂」でコミックマーケット99に出そうとしていた本の裏テーマは1995年でした。 

  2. リメイク版ではゲーム開始時点での年齢は18歳になっています。 

  3. 当時話題になったのが「非実在青少年」という単語です。