恢徳堂のヨーシャさんのブログ

銀塩写真の原理について

November 30, 2020

目次

はじめに

この記事は銀塩写真 Advent Calendar 2020の12月1日の記事になります。
今日は銀塩写真の原理について書きました。

銀塩写真を始めたわけ

こんなアドベントカレンダーを立ち上げてなんですが、銀塩写真に興味を持ったのは某あひるポケモンの名前かぶりが原因です。
それで昨年ドハマりして機材を買い集め、そして気がつくとフィルム現像までやっていたという感じです。
一応フィルムカメラはCanon EOS Kiss IIIとCanon EOS 750、HOLGA135BCとHOLGA120を持っています。

フィルムのしくみについて

なぜ銀塩写真と呼ばれるかは、フィルムカメラって実は銀の化合物(銀塩)を使っているからなのです。

暗室で写真を現像する人のイラスト by いらすとや

写真のフィルムにはアセテートやポリエステルで作られている1フィルムベースの上に、ゼラチンに臭化銀や塩化銀、ヨウ化銀などのハロゲン化銀を混ぜた乳剤が塗られています。この写真フィルムに光を当てて画像を得るのが銀塩写真なのです。さらにそれをフィルムと同じような感光材料を塗った紙にフィルムを通した光を当てることで紙に焼き付けることができます。もっとも最近はデジタル処理をすることも多いですが。なお、映画もデジタル処理はありますが、フィルムに現像してそのフィルムを映写機にかけて上映するという点では銀塩写真の技術が使われています。

フィルムの種類について

写真用フィルムのイラスト by いらすとや

銀塩写真で使われるフィルムですが、基本的に白黒かカラーか、現像したときにネガ画像2が得られるかポジ画像3が得られるかで分かれます。今現在流通しているフィルムは次の3種類です。

白黒ネガフィルム
白黒の、現像すると白黒のネガ画像が得られるフィルムです。カラーフィルムができるまではだいたい白黒でした。色を表現することはできませんが根強いファンが多くよく使われています。感光する光の波長の違いで全ての光に感光するパンクロマチックの白黒ネガフィルムと赤色光に感光しないオルソクロマチックの白黒ネガフィルムがあります。
カラーネガフィルム
だいたいフィルム写真というとこちらを思い浮かべる人が多い、色の付いたネガ画像が得られるフィルムです。さらに印画紙に焼き付けたりコンピューターに取り込んだりして色を反転させるとお馴染みのポジ画像が出てきます。ネガ画像がちょっとオレンジっぽいのはフィルムのベースにオレンジ色が付いているためです。そのため、色を反転させる際に補正をかけてあげる必要があります。後から補正が効くため、少しぐらい露出やカラーバランスが違っていてもなんとかなるフィルムです。その利点を生かして、映画では1回ネガフィルムで撮影した後にもう一回ネガフィルムで撮影して元の色を得るということもプロユース中心に行われています。
カラーリバーサルフィルム
スライドや印刷原稿に使われた、現像が完了した時点でポジ画像が得られるフィルムです。フィルムが完成品になるのですが、紙に焼くのがいろいろと大変だったり現像が大変だったりでコストが高く付きます。補正がきかないので、露出やカラーバランスについては正確に行って撮影する必要があります。フィルムのベースには色が付いていません。なお、このフィルムを間違えてカラーネガフィルムと同じ現像法をしても現像ができますが、いろいろ面白いことになります。そのため、あえてカラーネガフィルムと同じ現像法をして遊ぶ人もけっこういます。また、アマチュアの8mm映画では現像の手間を省くためリバーサル現像にすることが多いようです。

なお、映画やスライドなどのために白黒のポジ画像が得られる白黒リバーサルフィルムもありますが、現像できる現像所があまりにも少ないため、よっぽどのことがない限り目にすることはないでしょう。

銀塩写真現像の原理

さて、現像の際にはどのような化学変化が起こっているのでしょうか。それをざっとまとめると、次のようになります。

白黒ネガフィルムの場合

臭化銀や塩化銀、ヨウ化銀などのハロゲン化銀は光を当てると化学反応が起こって臭素や塩素、ヨウ素などのハロゲンと金属銀に分離します。ただ、銀になるのは一部だけなので、フィルム上のハロゲン化銀の結晶全体を金属銀にするためには化学薬品によって現像しなければいけません。このとき、フィルムには潜像と呼ばれる肉眼に見えない画像ができています。現像をすると、光を強く受けた部分は色が濃くなり、光を受けなかった部分は色が薄くなって白と黒の反転したネガ画像が得られるというわけです。その、現像に使う薬品が現像液です。現像液にはいろいろな種類があるので、おすすめの現像液を別に紹介したいと思います。

この現像を行うためには、液体が塩基性4でなければいけません。しかし、現像は放っておくとドンドン進行してしまいます。それを止めるために酸性の液体を使って化学反応を止める必要があります。それに使うのが停止液です。だいたい普通は酢酸が使われますが、匂いがきついので私はクエン酸で代用しています。

と、現像を停止したのはよいのですが、まだフィルム上には反応しなかったハロゲン化銀が残っています。そうなると、光があたればまた光に反応してしまうのでハロゲン化銀を除去する必要があります。ここで必要になるのがチオ硫酸ナトリウムという薬品です。チオ硫酸ナトリウム水溶液にフィルムを浸すとハロゲン化銀は錯イオンを形成してチオ硫酸ナトリウム水溶液に溶解します。そのときフィルムにはネガ画像が残ります。これで、このチオ硫酸ナトリウムを流水で洗い流せば保存に適したネガフィルムができあがる、というわけです。最後にチオ硫酸ナトリウムを洗い流す際には亜硫酸ナトリウムなどの水洗促進剤を使って水の量を減らすこともできますが私は使っていません。この定着液にはゼラチンの表面に硬い膜を作ってフィルムを保存しやすくする成分が入ることもありますが、ゼラチンを硬化させる成分が入ると流水で洗い流す時間が増えます。流水で洗い流す時間が増えるということは使う水の量も増えることになるので、その場合は水洗促進剤を使うのもよいでしょう。

カラーネガフィルムの場合

さて、これまで紹介した方法ですとグレースケールしか表現できません5。カラーフィルムの場合はフィルムの乳剤内にそれぞれの色で感光するように層を作り、それぞれの層に染料色素を入れているのです。現像の際にこの色素が発色するようになっており、それぞれの層でフィルムとカラー現像用の現像液が化学反応を起こして発色します。ただ、この発色現像の後にハロゲン化銀だけを除けばよいというわけではありません。金属銀の粒子でグレースケールを表現する白黒フィルムとは違って、カラーフィルムは染料色素だけで色を表現するので定着の前に漂白という処理が必要6になります。漂白の後で定着を行い、さらに得られた画像の安定化処理を行うとネガ画像が浮かび上がるネガフィルムができあがるというしくみです。

これらの処理はイーストマン・コダックが定めたC-41と呼ばれる現像処理7が使われています。このC-41という処理は基本的に38℃という温度とそれぞれの処理の時間が定められており、現像用の機械で行うことを前提としていますが、温度管理と時間管理をしっかり行えば小型タンクでの手現像も不可能ではありません。薬品は手に入れているので、いつか試してみたいと思っています。

カラーリバーサルフィルムの場合

カラーリバーサルフィルムの実例

カラーリバーサルフィルムもカラーネガフィルムと同様にそれぞれの色の光に感光する層があり、それぞれの層に染料色素が入っていて反応させることによって発色するしくみは変わりありません。しかし、フィルムに残す画像がネガ画像かポジ画像かで違いが出てきます。さらにカラーリバーサルフィルムの場合はフィルムが完成品になるため、補正がきかないのです。

さて、どのようにしてカラーリバーサルフィルムはポジ画像を得るのでしょうか。それは、最初に白黒現像8を行った後に再度露光するか薬品で化学反応を起こすかしてポジ画像の潜像を得るしくみになっています。その後はカラーネガフィルムと同様の処理を行えばポジフィルムができあがるわけです。この処理は、イーストマン・コダックが定めたE-6という処理が使われます。

銀塩写真の未来

さて、ここからは銀塩写真の未来について考えてみたいと思います。

写真はデジタル化の進展が今では進んでいます。今ではデジタルカメラ、というよりスマートフォンのカメラ機能が大いに発展しており、銀塩写真よりきれいな写真がデジタルで撮れるようになってきました。デジタルデータなので、編集も簡単です。合成も簡単にできる時代になっており、そのためにフェイク画像が数多く生まれているという弊害もありますが、デジタルデータなので写真に写っているものをコンピューターで画像認識して読み上げることも可能になっています。その点、視覚によらなければ認識できない銀塩写真はユニバーサルなメディアではないといえるでしょう。

また、フィルム写真には化学反応が必要です。銀塩写真の現像では環境汚染につながるような薬品を数多く使います。そもそも、銀イオン自体殺菌効果があるように生物にとって有害なものなのです。近年の環境保護意識の高まりから、環境汚染につながる銀塩写真に使われる薬品の規制もある状態です。銀塩写真は、環境にかかる負荷の問題を考えなければいけない時代になっています。

しかし、銀塩写真の未来は暗いのでしょうか?私は、そんなことはないと思います。学校教育の現場では、修学旅行に持っていくのは写ルンですのようなレンズ付きフィルムでなければいけないという例があるそうです。デジタルにしろフィルムにしろ高いカメラでは盗まれたり壊されたりしたときの対応が大変になる上に、スマートフォンでは通信機能があるのでそれ以上にトラブルが起こってしまうことを避けたいという意図があるようです。また、銀塩写真の、そしてフィルムカメラの良さをわかる人が現れてきていることも救いです。フィルム人気の高まりも最近見られるようになってきました。

最後に、考えなければいけないのは、デジタルはコンピューターとデータがなければ人間の目に見える形にならない、という点です。ということは、コンピューターの進化によってはこれまで読めていたデータが急に読めなくなるということもありえます。とりわけ、仕様が公開されたオープンフォーマットでない画像は将来的に見られなくなってしまう可能性もある、ということです。その点、銀塩写真は視覚を使えば認識できます。なので、100年とか1,000年とか残すことを考えるとマイクロフィルムに記録した方がよいのでは、とい宇考えもあります。適切な材料を使い、適切な処理を行い、適切な温度と湿度で保管すれば銀塩写真は1,000年の保存に耐えられる可能性があります。GitHubは永久凍土にソースコードを保存する施設を作りましたが、その際にはマイクロフィルムを使ってQRコードとともにソースコードの写真も保存されています。QRコードは規格が変われば読めなくなってしまうおそれもないわけではありませんが、写真なら文字が解読できれば読めるわけです。なので、長期的に記録を保存するメディアとして銀塩写真は生き残ると思っています。

終わりに

もしよかったら、みなさんも銀塩写真とフィルムカメラに興味を持っていただければ幸いです。

次回の記事は、私の銀塩写真の現像についてです。明日もよろしくお願いします。

感想、ツッコミなどお待ちしております。Twitterまでいただければ幸いです。

  1. 昔は燃えやすいセルロイドが使われていました。今でもアセテートを使ったフィルムは高温多湿環境で加水分解し、劣化してしまうという問題を抱えています。 

  2. 色が反転した、元々の色の補色で表現される画像。 

  3. 色が反転していない、目に見えるのとほぼ同じ見え方をする画像。 

  4. いわゆるアルカリ性。 

  5. もっとも、イルフォードのXP2スーパーのようなカラーネガフィルムの処理をすることを前提とした白黒ネガフィルムもあります。 

  6. 意図的に銀を残した「銀残し」という表現をする事もあります。その場合は彩度が低く、暗部が暗くなってコントラストの強い画像になります。 

  7. 各フィルムメーカーにC-41と互換性のある処理が定められています。 

  8. 白黒ネガフィルム用よりコントラストが高くなるように調整したものが使われます。